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-序章・災厄の姫君-
試合が終わり、紗輝はロビーで腰掛けながらドリンクを飲んでいた。 その姿は「何でこんな子がアリーナのロビーに?」と思わせるほど 争いとは無縁な外見をしていた。 年は14〜15くらいか。 身長も低めで、体もほっそりしている。 着てる服もパイロットスーツなどではない、かなり軽装な格好だ。 誰がどう見てもレイヴンには見えないのだが・・・ 紗輝はレイヴンである。 しかも、アリーナではかなり人気の。 並みのランカーとはかけ離れた強さを持ちながらも、美しい―― というかかわいい顔立ちなので、そのギャップにひかれるものも多いらしい。 『はぁ・・・』 ため息を一つ。 試合に勝ったのはいいのだが・・・ もともと紗輝は争いが嫌いな子で、できるだけ傷つけあうことは したくないタイプだ。 負けて動かなくなった相手の機体をなおも破壊する行動は 紗輝にとっては特に気分が悪い。 どう考えてもレイヴンには向いていないようなのだが・・・ と、そこに足音が近づく。 ![]() 「よぉ、姫。また勝ったな」 一人の大柄な男が紗輝に声をかける。 『あ、オーラスさん』 「相変わらずいい破壊っぷりだ」 『あそこまで壊したくなんかないですよぉ。あの人大丈夫だったかな・・・』 「ああ、それなら問題ない」 『?』 「あいつは俺の知り合いのレイヴンでな。 さっきメールが来て、”無事だから心配するな”だとよ」 『そなんだ、よかった・・・』 「んでな、機体を消されたのに”いや〜、噂以上だね。 すごい攻撃も見れたし、満足だよ” とか言ってたぞ」 『自分のACがなくなっちゃったのに、満足って・・・』 「はは。そういう奴が出るくらい姫は魅力的ってことだろ」 『そんなこといわれても・・・よくわからないですよ・・・』 「その顔でいうなよ。ほんとに気づいてないんだもんな。 姫は相当かわいいんだぞ?」 『ぇ――』 赤くなってしまった。 「こんなかわいい子がレイヴンやってるなんて聞いたら、そりゃ気になる やつもいるだろう」 『そ、そうなのかな?』 「ああ。しかも凄まじく強いときてる。ナインブレイカーも狙えるほどにな」 『ナインブレイカー?』 「アリーナのトップのことだ」 『へぇ、トップに肩書きみたいなものがあるんですね』 「あぁ、もとはほとんど伝説だ。 ある化け物みたいなランカーがいてな。機体名にナインがつくらしい。 で、そいつを倒したやつがナインブレイカー=ナインを超えるものと 呼ばれたわけだ。 いまでは強さの象徴として、アリーナのトップをナインブレイカーと 呼んでいる」 『そんな意味が・・・あ、でも紗輝はそんなに強くないんですよ?』 「さっきの破壊劇のどこをどう見れば強くないになるんだ? あの戦闘能力は明らかにトップランカークラスだぞ」 紗輝は困ったような顔をしている。 『でも、紗輝の実力なんかじゃ・・・ないし・・・』 紗輝の能力は、幼少の頃から取り付いている「何か」が引き起こすものである。 ぱっと見がどうにも悪霊っぽいので、紗輝自身は悪霊と呼称しているのだが。 その悪霊は、紗輝に危険が迫ったり戦闘状態になると暴れだす性質があり ACを動かしているのもほとんどがその悪霊なのだ。 そのおかげで、一般では不可能な戦い方ができるのだが・・・ 『紗輝は、あんな動き出来ないですよ』 「だが、その能力を持ってるのは姫自身だ。自分で使えるかどうかは 問題じゃない。その強さを実戦で発揮できるかどうかが重要だろ?」 『そうなんだけど・・・ん〜・・・』 「そう考え込むなって! もっと明るくし・・・って、しまった」 いきなり立ち上がり、紗輝の手を引く。 『ゎわっ』 いきなり紗輝の後ろから黒いもやが現れ、オーラスの腕を切りつける。 傷はそれほどでもないようだが、紗輝はひたすら慌てている。 「あ〜〜、もうこの程度痛くねぇから! 大丈夫だっての!」 『で、でも』 「いいから来い。みんな待ってるんだから。勝利のお祝いだ!」 『えぇ!?』 「姫のことを気にってるやつが数人集まっていてな。今度姫が勝ったら お祝いやろうってことになってたんだ。あぶなく遅れるところだったぜ」 『そ、そんな、いいですよぉ』 「ほぉ、じゃなにか、俺に怪我させといてさようならってか?」 といいつつ、笑顔で紗輝を肩に担いでしまった。 『ぅ〜、じゃ・・・行きます』 「すなおでよろしい!」 オーラスは当然数度切られるが、まったく気にしていないようだ。 基本的にこういう強引なのは苦手なのだが・・・紗輝は笑顔だった。 『こういうのって・・・いいな・・・』 |
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